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皆さんこんにちは。旅する獣医師あにとらです。突然ですが、皆さんは犬猫を保護している民間のシェルターや、動物愛護センターといった施設の内部を見たことがありますか??「内部がどういったところか見たことがない」という方は多いのではないでしょうか??

 

今回は2020年現在、滞在中であるオーストラリアの動物シェルター(アニマルシェルター・動物保護施設)の内部を、詳しく説明して行きたいと思います!

 

*動物シェルターって何??という方は前回の記事をご覧ください。

 

目次
1.はじめに
2.見学させてもらった施設
3.動物シェルターの内部を大公開!
4.まとめ

 

1.はじめに

そもそもなぜオーストラリアなのか?という理由ですが、私の人生最大の目標は日本の動物福祉向上。ざっくり言うと、その勉強のために動物福祉先進国に行ってみよう!というところです。(ざっくり言い過ぎですかね。笑)

 

オーストラリアは動物シェルター大国。そのオーストラリアで大小いくつもの施設を見学することで、日本にその経験と知識を持ち帰り、将来、動物福祉施設を日本に建てるつもりでいます。今までにオーストラリア以外にも、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本国内などにて動物福祉施設の見学をしてきました。

 

動物好きな人も、動物に興味のない人も、動物達自身にとっても、住みよい社会作りに貢献できたらいいなというのが、私が獣医師になった理由でもあり、幼い頃からの私の目標なのです。

 

前置きが長くなりましたが、現在私が住んでいるメルボルンの周辺だけでもかなりの数の動物保護施設が存在します。その中で4つの施設を見学させてもらったので、その様子をご紹介しますね。

 

2.見学させてもらった施設

・Lort Smith

Adoption Hub

 

・RSPCA(Burwood East)

https://goo.gl/maps/bp1wbqxUqSxq5suc8

 

・Lost Dogs’ Home

Home

・Save A Dog

Home

 

保護施設をメイン業務としていたり、保護施設メイン+動物病院というスタイルだったり、大きな動物病院にシェルターが併設していたりと、形態は様々。一つ一つ解説していきます。

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*写真をたっぷり使って説明していきたいのですが、オーストラリアの施設は取り決めが厳しいようで、写真撮影可能なところは5ヶ所中1ヶ所しかなかったです・・・。写真撮影不可の施設は外観写真と、手書きの見取り図(画伯。笑)で説明させてもらいますのでご了承ください。

 

3.動物シェルターの内部を大公開!

 

 Lort Smith Animal Adoption Hub 

名前にもある通り、主に譲渡を目的とした施設です。譲渡対象の子達は常時見学可能エリアで生活をしており、ワクチン接種直後や避妊去勢手術待ちなどの理由で譲渡対象ではない子達は奥のシェルターで待機しています。

 

*ここのみ唯一、内部の写真撮影と掲載の許可が出たので、写真を載せておきます。

 

施設構成
・受付(簡易なカウンターのみ)
・カウンセリングエリア&カフェ(机と椅子のセットが2組)
・猫部屋(子猫と成猫ごとに大小4部屋)
・犬部屋(広い部屋が1つ、狭い部屋が1つ)
・小動物舎(うさぎやモルモットなど)

 

見取り図はこんな感じ。(画伯ですみません・・・)

 

受付の奥にある扉を入ると、まずは綺麗な通路と左手にガラス張りの犬舎が見えます。人の目の高さと、犬の目線に合う高さに窓があります。(見切れてますが左下のところが犬用窓。)

   

犬部屋。かなり広いスペースを1匹で使っていました。他にも奥に譲渡待機の犬がいるそうですが、センシティブな子が多いとのことで、比較的フレンドリーなわんこが表に出ている形です。

 

犬舎の水入れ。体格に合わせて3段階+床に水入れがありました。上には壁に備えつけのホースがあって、掃除がしやすい仕組み。

 

右手に行くと猫舎ゾーン。この縦長の部屋には成猫が2匹暮らしていました。この左手には成猫の個別ケージがありました。ケージのタイプは完全に空調も別個となるような閉鎖式。(この後の仔猫舎で同じ形のものの写真が出てきます。)

 

違う角度から見るとこんな感じ。高さを設けていたり、1部屋にいくつかのトイレを置いていたり、隠れられる場所を設けていたりと、しっかり猫の生活に合わせた部屋になっています。

 

さすがに知らない人が出入りするので、普段は箱の中に隠れていましたが、おもちゃを出すとチョイチョイと手を出して遊んでくれました。

 

仔猫舎その1。日本のペットショップみたいなイメージを受けるガラス張りの個室に2匹ずつ兄弟(か、同じ年頃の仔猫同士。おそらく兄弟。)で生活していました。空調を完全に仕切ることができるので、猫風邪などの呼吸器感染症の施設内感染を防ぐことができますし、ちゃんとしたプロトコルで掃除すればエイズなど他のウイルス病にも効果がありそうです!

 

リラックスして寝ております・・・。1部屋あたり2つの段差(3階層)があって、上下運動ができるようになっています。トイレは右側の穴の中で、生活スペースと区切ることができます。もう一つは隠れるためのスペース。この子達は見学者を気にせず眠っておりました。(笑)

 

もう1組は外に出て遊んでいました。左の子は避妊手術後でエリザベスカラーを着けていますが、元気いっぱい。このくるくる回るおもちゃをチョンと動かすだけで、2人とも夢中になっていました。かわいすぎる・・・!

    

猫舎その2。ここはカフェスペースからもガラス張りで見えるエリアです。無邪気に遊んでいる仔猫たちを見ていたら、譲渡率も上がりそうなものです。

 

私も遊んでもらいました。里親希望というわけではなく、ただの見学者ですが、あまりのかわいさになかなかこの場を離れることができなかったです。(笑)

 

驚くほど綺麗ですよね。これがAduption Hubと呼ばれる譲渡施設です。スタッフさんによると、奥に更にシェルターがあって、まだ譲渡準備ができていない子(ワクチンや避妊去勢手術など)や、見学者が出入りする環境に不向きな子がいるそうです。(事前予約制でスタッフと一緒に見学できる。)

 

 

 RSPCA Burwood East 

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世界各地にあるSPCA。オーストラリアではRSPCAと呼ばれます。Burwoodは地名。(イギリスもRSPCA、アメリカはASPCA)

 

*SPCAとは
SPCA=Society of the Prevention of  Cruelty to Animals(和訳:動物虐待防止協会)

SPCAと冠している各国の団体は母体が同じというわけではなく、SPCAの基本理念に習って各国で独自に作られた施設です。

一番古いSPCAは1824年にイギリスで作られたRSPCAです。

 

メルボルン中心部からトラムで1時間ほど。ここは内部撮影不可だったので、見取り図と説明だけとなります。外観は上の写真。第一印象は「でかっっ!!!」でした。自動二重扉の正面玄関から入ると、エントランスの広いこと広いこと!

 

施設構成
1階
・エントランス(自動の二重扉)
・受付エリア(広い!常時2人体制、ショッピングモールのインフォメーションみたいなカウンター)
・ペットグッズ売り場(フードやクレート、おもちゃなどなど。ここも広い!スポンサーはペットフード大手のヒルズ。)
・動物病院(しっかりとスペースとってあります)
・グルーミングルーム
・カフェスペース

階下
・譲渡エリア(犬舎、猫舎、小動物舎)
・屋外プレイグラウンド
・広場
・保護施設(スタッフのみしか入れないエリア。日本でいう中型のアパートみたいな大きさが5〜6棟。外からは何も見えないようになっている。)
*坂道に作られた階層構造になっているので、階段を降りても地下ではなく、1階になります。窓もたくさんあって太陽光がちゃんと入るようになっていました。

 

譲渡エリアの見取り図はこんな感じ。(もはや載せるのも忍びないクオリティでごめんなさい・・・)

 

階段を降りて譲渡受付などがあるホールがあり、左手に猫舎、右手に犬舎、後ろに小動物舎があります。犬舎はガラス張りの3〜5畳ほどの個室が体格に応じて割り振られていました。全部で50部屋強ですが、いくつか空き部屋や荷物置きになっていました。

 

犬舎特有の匂いはあまりなく、それぞれ個室には陽圧の空調が取り付けられています。簡単な犬用ソファと備え付けの水と餌入れがありますが、残念ながら、清潔という印象は受けませんでした。(とはいえ、部屋全体はかなり綺麗に管理されている方だと思います。)

 

*余談ですが、ドッグレース文化のあるオーストラリアならではなのか、保護犬にはグレーハウンド犬が非常に多かったです。ドッグレースを引退した犬の悲しい処分の現実に関して話題になることのあるオーストラリアですが、こういった施設を経て新しい家庭に迎えられたわんこたちはまだラッキーな方なのかもしれませんね。

 

猫舎は6〜10畳ほどのガラス張りの部屋が4つほどあって、その中で何頭かが暮らしています。部屋の中は隠れ場所、ごはん、水、おもちゃ、トイレがあり、来訪者はそれぞれの部屋を自由に入って猫たちと触れ合うことが可能。(1度に入れるのは5人まで。)

 

中にいる猫ちゃんたちの名前、性格、おおよその年齢などの情報シートが扉に貼られていました。他にも、多頭飼育に向かない猫ちゃんたちは、半畳ほどのスペースで屋根まで高さのある個別ケージで生活していました。

 

小動物舎にはうさぎやモルモットたち。しっかり敷きわらがあって、犬と猫と完全に離れた別室で、匂いや吠え声の聞こえないようになっています。

 

 

 Lost Dogs’ Home   

外観はこんな感じ。こちらも住宅地からやや離れたところ(それでも頑張れば歩いて行ける。)の広い敷地を使っていました。受付を通り過ぎて向かって右手に犬舎ゾーン。左手に猫舎ゾーンです。

 

施設構成
・建物の前にレクリエーションエリア
・受付(普通のカウンター)
・犬舎(譲渡対象犬舎は10部屋x4棟。他にスタッフしか入れない犬舎もあり。)
・猫舎(全て入れる。成猫と子猫の2棟。)
・広場

ここは華美な譲渡エリアがあるわけではなく、いわゆるシェルター感満載の施設でした。具体的にいうと、犬舎はフェンスと風除け程度の壁でできたオリタイプで、基本的に外に吹きさらしになるような構造。猫舎は屋内ですが、金属性の網のケージが半数。若い子や感染症を持っているこは完全個室タイプの猫舎でした。(Lort Smithにあったものと同じタイプ)

 

保護犬舎あるあるな”近づくと吠える”という様子は、ここオーストラリアでも同じ。奥にはスタッフしか入れない犬舎ゾーン(まだ譲渡向けではない犬舎。)もあるので、表にいるワンちゃんたちは譲渡向き(攻撃的でない。予防や避妊去勢手術が済んでいる。など。)のはずです。それでいても激しく吠える様子を見ると、シェルター環境はやはり犬が住む場所としてベストとは言えないのかな、と感じます。

 

 

 Save A Dog 

外観はこんな感じ。と言っても、林の中に埋もれるように建っていたので、全体像が分かりにくいのですが・・・。大きな幹線道路の脇にひっそりと建っている感じですね。

 

施設構成
・受付
・犬舎(あまり光の入らない構造。)
・猫舎(主に2部屋。1部屋はスタッフのみ。断然綺麗。屋内エリアと屋外エリアあり。屋内はLort Smithにもあった個室マンションタイプ。)
・ミニドッグラン(あまり使っていないと言っていました。)

 

元々、地方自治体が管理していた施設のようです。犬舎自体は本当に昔ながらのシェルターという感じで、暗くて硬いコンクリート作り。上げ下げ可能な木の台と、固定式の水皿というシンプルな作り。匂いもそれなりにキツイです。吠え声も室内で響くので、防音用ヘッドホンをつけて作業している人もいました。

 

散歩は認定を受けたボランティア(またはスタッフ)のみで隣接している公園に連れて行くようです。実際、私も場所がわからずに裏の公園をうろうろしていたら、スタッフらしき人が散歩をしていたので教えてもらいました。お年をめした方が大型犬と歩いているのを見ると、日本なら若干不安を覚えそうですが、さすが認定を受けた”散歩のプロ”なだけあって、しっかりとハンドリングされていました。

 

猫舎は断然綺麗な個室マンションタイプが主。(Lort Smithと同じタイプ。)外のフェンスで囲まれた所に常時いる猫ちゃんたちもいました。

 

4.まとめ

 

今回は

・大きな保護団体であるRSPCA

・設営と管理に行政が関わっている(民間団体への委託に近い形態?)施設

・個人(と言っても大きめ)の病院が施設を併設しているタイプ

の主に3タイプ4施設を見学しました。

 

日本にもよくあるオリタイプの保護施設もあれば、ここはおしゃれなカフェですか?というくらい綺麗な所もありこれはオーストラリアだけではなく、イギリスやドイツも同じで、施設自体の古さはもちろん、団体の懐事情も関係していそうです。

 

犬舎については、どこもスタッフのみしか入れないエリアというものもあって全体像の把握が難しいです。なので一概には言えませんが、やはり周りの音が聞こえるような構造の犬舎ほど、吠えてしまう犬も多く、精神的に不安定になりやすいのかな?というような印象を受けました。動物保護施設の音や匂いの管理は本当に苦労しそうな点です。

 

その辺りも徹底して対策できるかどうかは、やはり施設次第であって、動物福祉先進国オーストラリアでも全てが完璧とは言えなさそうです。とはいえ、こういった保護施設がたくさんあって、行き場を失っても拾い上げることができるのは大きな違いかもしれません。(もちろん、ちゃんとした家庭での終生飼育が成されることが一番ですが。)

 

猫舎について気づくことで言うと、日本の野良出身猫に多い目やに鼻水を出している猫ちゃん(上部気道感染症)が全然いないこと。日本とは疫学的に違うというのはもちろんですが、おそらく、この個別に空調管理された部屋が施設内感染をうまく防いでいるのだろうな、と思います。

 

もっと色々と巡って、かつ上に載せた施設農地一つで長期ボランティアをさせてもらう予定でしたが、このご時世でその望みが断たれてしまったので、見学報告のみになってしまいました。何はともあれ、海外の動物福祉事情として参考になれば幸いです。

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