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長らく”ペットブーム”と言われ続けている日本。街頭はもちろん、大型ショッピングモールには必ずと言っていいほどペットショップがありますよね。

 

綺麗なショーケースにかわいい子犬や子猫たち。愛らしい姿で寝ている様子は人々の心を掴んでなかなか離してくれません。

 

こういった、日本で”よくあるタイプ”のペットショップですが、実は欧米諸国などでは珍しい、はたまた「あり得ない!」お店なんです。

 

その理由は動物福祉。生体を商品として”ストック”するタイプの売り方は”動物に優しくない”という観点からです。今日は世界のペットショップについて、旅する獣医師あにとらが実際に見てきた様子をご紹介します。

 

自己紹介”旅する獣医師あにとら”
山口大学獣医学科卒。
獣医師資格取得後、東北にて東日本大震災被災動物シェルターを併設する一般動物病院にて勤務。
シェルター閉鎖後はバックパッカーとして世界一周ひとり旅と、ヒッチハイクでの日本縦断を経験。 
帰国後、九州最大の夜間救急動物病院にて勤務。
同時期に「世界の人と動物との共生」をテーマにした世界一周動物写真展を全国5都市で開催。
現在も、診療や執筆活動などを通して、動物福祉の向上を目的とした活動を行なっています。

 

 

目次
1.日本のペットショップ
2.オーストラリアのペットショップ
3.ドイツのペットショップ
4.ギリシャのペットショップ
5.欧米諸国での動物のかい方
6.まとめ
犬のしつけでお困りの方に

 

1.日本のペットショップ

これは言わずもがなですが、綺麗なショーケースにかわいい子犬と子猫が並んでいるスタイルです。時に少し広めのケースで犬猫同士が遊んでいる姿を見ることもありますね。ショーケースの中はこまめに掃除がされていて、最近では少しずつ”表の見た目”は良くなっていっているように思います。

 

そんな綺麗なペットショップの裏側はどうなっているのでしょうか?

 

まずは日本におけるペット業界は生体が”商品”であることを忘れてはなりません。商品はプラスチックの容器でも動物でも、生きていようといまいと、下のように同じような過程を辿ります。

 

生産→市場→お店の商品棚

 

ペットの生体販売における”生産”はブリーダーです。ペットの健康を第一に考えて、遺伝病や交配頻度に気を配っているブリーダーもいれば、真逆の場合もあります。

 

日本で問題になっているのは非常に劣悪な環境で”工場”のように子犬や子猫を生産させている「パピーミル」と呼ばれるブリーダーであり、これは未だに現実としてあることです。

 

子犬が産まれたらまた次、また次、と繰り返し交配をさせ、ろくに掃除もされない狭いケージで”不要”になるまで、ひたすら産ませ続けるのです。ペットショップに並ぶ子犬や子猫の体はとても綺麗に保たれていますが、劣悪なブリーダー犬舎にいる時点では糞尿まみれの非常に不衛生な状況であることも多いのです。

 

【福井新聞社さんがYoutube上で公開しているパピーミルの動画】

*犬たちが鳴き続ける声が流れますので、再生の際は気をつけてください。

当該パピーミルは刑事告発されたものの、虐待容疑については不起訴となっています。この状態で虐待が無いと判断する司法にも問題があるように思います。

 

私もブリーダーから持ち込まれる子犬・子猫の診察を行った経験がありますが、時に衛生状態がひどい状態の犬猫を見ることがあります。「こんな状態じゃ、病気になっても仕方がない」といえそうなケージと、本人の汚れ具合です。

 

(病院に連れて来るだけまだ良い方なのかもしれません。治療すればまだ”売れそう”な場合は連れて来てくれるのです。親犬たちは帝王切開が必要になったとき以外は連れて来られないことがほとんどです。)

 

ブリーダー犬舎を出た子犬・子猫たちが次に行くのは市場です。犬猫をまとめて連れて来て”競り”にかける昔ながらの”市場”の他にも、ブリーダー・ペットショップ間やブリーダー・飼い主間のインターネット売買や、ブリーダーとペットショップが契約していて市場を介さない場合もあります。

 

こういった過程を経てペットショップの店頭に並ぶわけですが、商品である以上は他の商品と同じく、売れ残り倉庫のストック棚に並ぶような状態(市場を出ても表の綺麗なエリアに行けない状態など)もあり得ます。

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こういった流通の過程で「欠陥品」(病気や怪我)もあり得るわけで、場合によってはブリーダーに戻されて劣悪環境で生き地獄状態になってしまうこともあり得ます。

 

もちろん、これらは日本で一般的にみられる販売ルートであって、ブリーダーの全てが悪ではないです。犬のことを理解し、犬種の特性と健康を守るために努力されている優良ブリーダーたちはたくさんいます。

 

そんな優良ブリーダーから直接家庭へと買い取れる場合は、まだ理想的と言えます。ただ、裏側を0から100まで完全公開しているブリーダーは多くはないですから、飼い主側からブリーダーが優良かどうかを判断するのは非常に大変です。これが生体が”商品”である日本の現実です。

 

 

2.オーストラリアのペットショップ

次に、つい先日まで滞在していたオーストラリアのペットショップについて。ペット大国オーストラリアでは「どの家庭にも犬がいるのでは?」というくらい、犬の飼育率が高い国です。

 

がしかし、ペットショップでの犬猫の生体販売は基本的にありません。今はネットで子犬子猫を探すことが多いようです。各店舗に散らばることへの移動ストレスの軽減と、末端店舗で売れない場合の”ストック”としてのリスクが軽減できるシステムです。

 

【メルボルン市内のペットショップ】かつて犬猫たちが入っていた場所では写真が貼られていて、「私たちはネットショップを勧めています。」と書かれています。下段にはハムスターやモルモットたちが入っていました。

 

ペットショップは”フードやおもちゃを買うための場所”という立ち位置。または、鳥やハムスター、爬虫類、金魚などの小動物はペットショップで売られていることがあります。

 

【メルボルン市内のペットショップ】ちゅ〜るなどの日本製のおやつも売っていました。

 

さすがオーストラリア!と思いましたが、動物シェルターで仲良くなったオージーの友人によると、「つい5年くらい前まではペットショップでも犬猫が売っていたんだよ。老齢の世代では未だに動物の命を軽んじていることもあるし、ちゃんと変わって来たのはつい最近のこと。」とのこと。

 

以前から動物シェルターが多いことで有名で、動物福祉が発達した国だと思っていたので、つい数年前までペットショップでの犬猫生体販売があるということには驚きました。動物福祉先進国でも未だに動物福祉と実情との戦いがあるのだ、ということですね。

 

 

3.ドイツのペットショップ

「動物福祉先進国」の筆頭とも言えるドイツ。その実態を知るため、数年前にドイツで”動物旅行”をしたことがあります。

 

動物に的をしぼった旅行で、観光地へ行く事なく、動物シェルターやペットショップ、犬のしつけ教室などを巡りました。街頭で犬猫に関するアンケートを取ってみたりと、ひたすらドイツの動物福祉を体感するための旅です。

 

その中でも印象的だったのは、やはりペットショップで犬猫の生体販売をしていなかったことです。これは国民の中で当然の認識となっているようで、「犬猫の生体販売なんかしたら、そのお店は国民によって潰されるよ。」と言うほど。

 

そんな中、調べに調べ尽くして、全国で一件だけ犬猫の生体販売をしているというペットショップを見つけることができました。

 

「生体販売している店があるの知ってる?」と地元民に聞くと、「そんな店ありえないよ!そんなことできるわけがない!」と言っていましたが・・・。その非常に珍しい生体販売をしているペットショップがこちら。

 

【ドイツのフランクフルト郊外のペットショップ】かなり大規模なペットショップで、主にペットグッズを販売していますが、生体販売エリアも広かったです。犬猫の生体販売もありました。

 

【犬の販売エリア】広い部屋タイプの展示&生活エリアとお客さんとの間には腰の間ほどの仕切りが設けられていて、この仕切りの向こうにはスタッフのみしか入れないようになっています。犬が寝ていても、客にガラスを叩かれて起こされるといったことはなさそうですね。

 

【犬の販売エリア】日本の狭苦しいショーケースとは正反対で、かなりの広さの部屋に、おもちゃやベッドがあり体格別で分けられた子犬たちが遊んでいます。自由に行き来できる屋外エリアもあって、スタッフさんとボールで遊ぶ様子も見られました。

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日本のように”半年令を超えたら売れ残り”と言う認識もないのか、ある程度の大きさのわんこも生活していました。他の犬との遊びを通して社会化していく犬の習性を考えると、非常に良い環境のように感じました。

 

ただし、ここでももちろん”流通”過程を辿りますから、全てが理想的とは言えないのでしょう。(他に生体販売しているペットショップがないので、特別な経路を辿っていそうですが。)

 

【魚の販売エリア】補足として、鳥やハムスター、金魚や爬虫類などの犬猫以外の小動物の生体販売はドイツでもありました。(このペットショップでは日本の錦鯉からチョウザメまで、色々な種類の動物が売られていました。)

 

【ペットショップの屋外エリア】クジャクは売ってはいないのか?カモなど他の動物と一緒に屋外を自由にうろうろしていました。

 

 

4.ギリシャのペットショップ

今まで世界中を旅して来て、欧米諸国は店頭での犬猫の生体販売が少ないことは明らかだと実感しています。がしかし、「欧米諸国は犬猫の生体販売をしていない。」と括ることができないのは、例外もあるからです。

 

【ギリシャ・アテネのペットショップの外観】

 

ギリシャのペットショップでは日本と全く同じように、街中でショーケーススタイルで売られている犬猫を見かけることがありました。そもそもギリシャなど東欧や南欧は野良犬も多いのですが、純血種をペットショップで購入するということもあるようです。

 

【ギリシャ・アテネのペットショップ】外から見えるショーケースには子犬が売られていました。床材は新聞紙のようです。ペットショップの内部自体は綺麗でした。

 

【ギリシャ・アテネの公園の野良犬】

 

ギリシャは街中でも野良犬が多いのですが、そのほとんどが行政とボランティアの協力により予防接種と登録が為されています。ギリシャはボランティアに参加する市民が多いことも特徴のひとつで、野良犬や野良猫たちが街中でのんびりと生活している姿を見ると、「動物に優しい国なんだな」と感じます。

 

とはいえ、狭いショーケースに入っている犬を見ると、「どんな国でも問題があり、試行錯誤で進んでいるのだ。」と思いました。つまり、日本もこれからもっともっと良くなっていく余地があるということかもしれませんね。

 

 

5.欧米諸国での動物のかい方

「ペットショップで売っていないとなると、どうやって犬猫を買うの?」という疑問が出て来そうですよね。ドイツなどの西ヨーロッパ、オーストラリアなど動物福祉に先進的な欧米諸国でのペットの買い方・飼い方は以下のような方法です。

 

・ブリーダーから直接買う(犬種クラブの利用など)

・動物シェルターから引き取る

・知り合いから引き取る

・オンラインショップ

 

犬と一口に言ってもたくさんの種類がありますよね。その犬種の多様性が生まれたのは、人間が仕事や愛玩のために改良を続けたからです。

 

その犬種のそれぞれの特徴を守るために”犬種クラブ”と言うものが存在する国もあります。(ドイツ、アメリカなど多くの欧米諸国で似たような団体が存在します。)

 

その犬種における形態的な特徴や遺伝病などについての情報をブリーダー間で共有し、健康な純血種の遺伝子を守ることを目的としています。そういったブリーダーから直接購入することも欧米では一般的です。

 

ドイツやオーストラリアなど動物福祉先進国は犬を飼うにあたって、広さの確保や留守番時間の決まり、州によっては散歩のルールなど厳しい条件があるため、その犬種が好きでないとブリーディングをすることは難しいと言えます。

 

もちろん、中には福祉を考えない営利目的の悪質ブリーダー、日本のようなパピーミルもあるとのこと。

 

【オーストラリア・メルボルンの動物シェルター】子猫の譲渡エリアでは不妊手術を終えて、譲渡の準備が整った子猫が遊んでいました。

 

また、知っている方も多いと思いますが、欧米諸国は”動物シェルター(アニマルシェルター)”がたくさん存在しています。日本にも個人単位や団体として、シェルター活動をされているところもありますが、欧米諸国には大規模なものが多く存在するのです。こういった施設から引き取ることで、流通の過程であぶれた動物や、行き場のなくなった動物の殺処分を減らすことができます。

 

*動物シェルターについては以前までの記事をご覧ください。

【獣医師が解説】アニマルシェルター(動物シェルター)とは?

【オーストラリア】動物福祉先進国のアニマルシェルター。実際に見学に行ってみた。

 

 

6.まとめ

経済的には先進国に分類される日本ですが、生体を商売として売り買いすることでの弊害や、動物個々のQOL(生活の質)を考えないと言う動物福祉の面では、全く先進的では無いと言えます。

 

ペットショップで動物を買うことの全てに反対しているわけではありませんが、ペット産業の流通について買う前に知ることができたなら、今後、日本のペット産業の福祉も充実していくのではないかな、と期待しています。

 

この記事へのご意見、ご感想お待ちしております。シェアも大歓迎です。

 

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One thought on “海外のペットショップには犬猫が売っていないって本当?ヨーロッパとオーストラリアの場合。”

  1. 久しぶりにブログを見たら、更新されてる。youtubeでも、偶然、真冬の北海道で衰弱した子猫を拾った人や、ネズミ捕りにかかって、体中、粘着性の薬剤まみれになった子猫を育てた人のチャンネルを見てました。ダンボールに入れられて、箱の外に、誰か育ててくださいと書かれた子猫も。誰にも気づかれずに死んでしまった犬や猫もいるでしょうね。

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