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皆さんこんにちは。旅する獣医師あにとらです。

 


アメリカには“NO KILL”を掲げた犬猫のためのシェルター(動物保護施設)が存在します。

 

サンフランシスコにあるSF SPCAという施設もその「ノーキルシェルター」の一つ。文字通り、”殺さない”ことを目標としたシェルターです。

 

SPCAとは一体どういう施設なのか、中はどうなっているのか、現実的な問題はどこにあるのか。

 

今日は、私が実際に見学させてもらって見たものを、皆さんにも紹介したいと思います。今回は観光地などを巡る旅ブログではありませんが、興味の無い方にも一読してもらえると嬉しいです!

 

※写真は許可を得て撮影・掲載しています。写真の転載はご遠慮ください。(当サイト自体のシェアは大歓迎です!)

 

自己紹介”旅する獣医師あにとら”

山口大学農学部獣医学科卒。
獣医師資格取得後、東北にて東日本大震災被災動物シェルターを併設する動物病院にて勤務。
一般外来診療とシェルター診療を兼任。
シェルター閉鎖後はバックパッカーとして世界一周ひとり旅と、ヒッチハイクでの日本縦断を経験。
帰国後は九州最大の夜間救急動物病院にて勤務。
同時期に、仕事と並行して世界の人と動物との共生の様子を伝えるため、全国5都市での世界一周動物写真展を開催。
現在も、執筆活動などを通して動物福祉の向上を目的とした活動を行なっています。

 

目次

1.SPCAとは

2.サンフランシスコSPCAについて

3.実際に行ってみた(猫編)

4.実際に行ってみた(犬編)

5.所感

6.どうやってこの施設を知ったのか
※4〜6は次回。

 

↓↓ギリシャ・アテネで私が見た犬猫の様子はこちら。

【世界と日本の動物】ギリシャ・アテネの犬猫事情。

 

 

↓↓世界一周前のドイツ動物旅行記はこちら。

http://ani-tra.jugem.jp/?cid=2

 

1.SPCAとは

 

SPCAとは

 

Society for the Prevention of Cruelty to Animals(動物虐待防止協会)

 

の略。

 

 

世界各国に“SPCA”の名前を持つ非営利団体が多数存在します。

 

アメリカ全土で最大級なのは“ASPCA”。SF SPCAはサンフランシスコ動物虐待防止協会の略で、サンフランシスコを主な活動地としている団体です。

 

私は今までイギリスのRSPCA(英国動物虐待防止協会)のシェルターを数カ所個人で見学をさせてもらったりボランティアをしたり、国全体で殺処分ゼロを掲げているドイツのティアハイムという施設も見学させてもらったことがあります。

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*2020年時点ではオーストラリアのシェルター見学もしています。

 

(当時はブログをやっていなかったので、特にイギリスに関して、ネット上では記録らしい記録はありません・・・しかし当時は、日英の動物保護の実態などについて人前でお話させてもらう機会も頂いて、とてもいい経験になりました。)

 

 

さて。「虐待防止とはなんぞや??」というところですが、SPCAの活動はあらゆる事情で飼い主を失った犬、猫、その他各種動物を保護し、新しい家庭を探すことを目的とし、その中に被虐待動物の保護も含まれます。

 

こういった活動をメインとして、地域社会の安全を守り、子供達の情操教育なども含めた啓蒙活動を行なっています。

 

欧米におけるSPCAの歴史は非常にふるく、サンフランシスコSPCAを例に挙げれば1868年(150年前!!)に遡ります。

 

その当初は、動物を街中引きずり回すなど人間による理不尽な虐待が日常的に行なわれていた時代。それを食い止めるために立ち上がったのがこういった団体の始まり。

(SPCAの名前を持たずとも、イギリスのDog Trustなど、同様の目的を持った大規模な団体は数多く存在します。)

 

現代は施設に入る理由は様々。

飼い主の病気、死去。

施設の前に捨てられていた。

引っ越しなどで飼えなくなった。

地域住民から虐待(ネグレクト含む)の通報を受けて保護することもあります。

 

日本においては上記の理由で動物が連れて行かれる先は”保健所”や”動物愛護センター”と呼ばれる場所が多いでしょう。

 

がしかし、名前の響きの良いこういった施設で最終的に動物たちを待っている未来は”死”。いわゆる、殺処分です。

 

それが日本のシステム。

 

海外にはこういった家庭と殺処分施設の間に立ち、殺処分を減らすために効果的に活動している団体がたくさんあります。この”効果的”どうかが重要なポイント。

 

日本でも多くの動物保護団体が存在し、行政と力を合わせて着実に改善に向かっています。がしかし、”効果的に”とは言えないパターンも多いのが現実。

 

その理由は国の制度の問題と国民の関心度の違い、行動を起こす際の方法論の問題と、私は考えています。

 

そしてこれは、先進国と言い張る日本において恐ろしく進歩の遅れた、日本の国民性を問う問題だと思ってます。(そのあたりの話を始めると本題に入れなくなるので、またいつかということで・・・)

 

以前にも紹介した言葉ですが、”国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方で分かる。”

 

ガンジーののこしたこの言葉は私が世界一周をする中で、切っても切り離せない着眼点です。

 

2.サンフランシスコSPCAについて

 

先ほどもお伝えしたように、SPCAの名前を持つ団体は世界中にたくさんあります。

 

イギリス、アメリカ、オーストラリアなどでは特に、国全体で見てもこのような団体の影響力は大きいと言えます。街中のアンテナショップ、バス停の広告など、いたるところでその存在を知ることができます。

 

サンフランシスコSPCA(以下 SF SPCA)は1868年、James Sloan Hutchinson氏により創始され、サンフランシスコを活動拠点とする団体として今に至っています。

 

↓↓公式HP

https://www.sfspca.org/

 

SF SPCAの大きな特徴は、冒頭でお伝えしたように“NO KILL”を目標に掲げていることです。

 

”殺処分をしない”

ここが大きな特徴。

 

そう、世界各国にあるSPCA含む動物保護施設は「動物虐待防止協会」という名を持ちつつも、”やむを得ない場合”に限り、施設内での殺処分を行なうところが多いのです。

 

これは実際に、日本も含め各国各所の動物保護施設に見学、インタビューをさせてもらった上での事実です。

 

(そして、その安楽死は獣医師が行います。学生時代にボランティアをきっかけに出逢い、尊敬していたある獣医師は、そういった行為が重なる度に心を痛め、最終的に自ら命を絶ってしまいました・・・)

 

がしかし、SF SPCAは殺処分をしない。

 

とても大きく、意義のあることのように思います。

 

また、サンフランシスコ全体として“NO KILL CITY”を目指しているのですが、結果としてはこのSF SPCA施設内では殺処分しないというところが現実です。

 

ん??どういうこと???

 

という点は、これから何回かに分けてお伝えする中でお分かりいただけると思います。

 

3.実際に行ってみた(猫編)

 

前置きが長くなりましたが、早速SF SPCA内部の実際の様子をお伝えします。

 

※写真は許可をもらって撮影・掲載しています。

 

 

今回訪れたのはSF SPCAのMission Adoption Centerという施設。

 

↓↓場所はこちら。

 

BARTというサンフランシスコの主要鉄道の駅から、徒歩10〜15分ほどと立地は良好。駐車場も完備されています。

 

 

アメリカの広大な土地を、1ブロック丸っと利用しています。

 

 

まず、施設の出入口に設置してあったワンコ用のおトイレバッグとゴミ箱。建物の外の細かなところまで行き届いているなあ、というのが第一印象。 

 

 

 

動物病院棟。(下は倉庫になっています。)

建物はとにかく大きくて、全体像を写すのは難しいほど。

 

 

トレーニングセンター(しつけ教室)も併設。

 

 

こちらから病院とシェルター(アダプションセンター=里親募集中の犬猫の暮らす場所)に入ることができます。

 

 

動物病院は見上げるほど大きいです。

(こちらは取材・撮影許可が出なかったので入っていません・・・今回は肩書きなしの旅人としての訪問なので叶いませんでしたが、数年以内には再挑戦したいところ・・・)

    

 

まず目に飛び込んでくるのは大きなショーウィンドウのような部屋。

 

 

中では愛らしい仔猫さんがくつろいでいました。

 

 

壁に設置されたタブレット画面にはにゃんこの説明も。

 

管理ID、名前、誕生日、性格、施設に入った理由、避妊去勢手術の有無やマイクロチップの有無など。事細かな情報が書かれています。フリー紹介文にはにゃんこ目線で書かれたセリフもありました。

 

このタブレットはフードメーカー大手のPURINAが支援しているようで、トップにロゴが表示されています。

 

 

ご飯は2種類。水皿は1つ。

 

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トイレ砂も2種類用意されています。

 

 

お隣の部屋には橋が架かっていました。

 

 

これはサンフランシスコ名物のゴールデン・ゲート・ブリッジを模しているのだそうな。

 

  

 

室内には遊びものや寝床、隠れ場所も用意されています。

 

 

掃除中の部屋。室内に1つは排水口があり、掃除がしやすい造り。

 

 

扉は2重。

 

 

1つ目の扉を開けると、いくつかの猫部屋が並んでいます。個室には鍵がかかっていて、スタッフさん、ボランティアさん、許可を得た人しか入れないようになっています。

 

 

にゃんこの場合は1部屋あたりに1〜2匹ずつ。相性や性格によって部屋割りが為されているようです。

 

 

 

 

 

 

仲良しさんの場合は、2匹一緒に引き取ってもらうよう張り紙がしてあります。

 

 

なかなかなデザインルーム・・・

 

 

寝床としてクレートも置いてあったりして、”できるだけ家庭環境に早く馴染むように”ソファなどのインテリアを置いてあるそうです。

 

(普通の家にこのデザイン性はなかなか無いのでは?と思ってしまいますが。笑)

 

 

縦を意識した内装はいいですね。

 

日本にも猫との生活を意識したデザインを提供する、猫専門建築家さんがいます。

 

私の昔からの夢(家に関して)は、梁のしっかりした家でにゃんこが自由に高いところに行ける、というもの。さすがに今から建築を徹底的に学ぶのは難しいですが、家庭環境の相談もできるような獣医師というのは私の目指すところです。

 

 

部屋の中ではボランティアさんがにゃんこと遊んでいたりします。

 

ボランティアは最低6ヶ月間通うことを前提に、事前講習を経た上での登録制。犬の散歩や、猫と遊ぶ、シェルター訪問者への説明やイベントのお手伝い、自宅での仔犬・仔猫・老齢動物のお世話など。多岐にわたるボランティア機会が設けられています。

 

 

次のゾーンへ。

 

表の目立つ位置にいるのは仔猫さんや人懐こい、いわゆる”もらわれやすそうな”にゃんこが多い印象。 

 

 

部屋の出入口には手指の消毒剤もあります。

 

 

窓の向こうからのぞいている私を、遊んでくれる人がどうか観察している雰囲気の黒猫さん。

 

 

広くてキレイ。においもありません。譲渡スピードが早いからか、”掃除中”となっている空き部屋が存外、多い印象です。

 

 

施設に入った時期やどこから来たかの説明もあります。時期に関しては当月(1〜2週間以内)に来たにゃんこがほとんどで、避妊去勢手術済みの子も多いです。

 

つまり、このMission Adoption Centerではものすごいペースで里親が見つかっているということ。

 

この譲渡率の高さ故、他の保護団体・施設から移って来ている子がとても多いのです。

 

ただし、”もらわれやすい”これがキーワード。

 

その”もらわれやすさ”の一端を担っているのが、この綺麗な建物と凝ったインテリア。もうひとつは、犬猫本人の性格、状態です。

 

”もらわれやすい”とは。

 

しつこいようですが、現実については追々説明します。

 

 

スタッフさんの記録が壁にかかっています。ご飯の減り具合や、おトイレ状況、体調で気になることなど、普段のお世話に関することが書かれていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”道ばたで野良猫を見たら”

・地域猫とはなんぞや。

・地域猫の避妊去勢手術の推奨(術後は元のコロニーに返す)

・猫を見かけた時の連絡先

について書かれています。

 

 

”動物福祉における5つの自由”

1.飢えと渇きからの自由

2.不快からの自由

3.痛み・傷害・病気からの自由

4.恐怖や抑圧からの自由

5.正常な行動を表現する自由

 

これは国際的な動物福祉に関する基本理念です。

 

1〜4は当然の事として、日本では特に[5]に対する人間の勘違いが、時に問題になっているように私は感じています。人間の感覚と都合を押し付けてしまい、動物にとって快適な環境が整っていないこともしばしば。

 

人間の性格が個々に違うように、動物の性格も個々に違います。その上、本来持っている習性は人間とは全く違う。

 

犬は犬。猫は猫。人は人。

 

動物をひたすら愛するのは構いませんが、人間と同じように育てるというのは、動物の習性と個性を尊重できていないかもしれないと、私は危惧しています。

 

まずは習性を理解するよう努めること。動物の習性を学ぶことは動物を飼う上で、絶対に欠かせない知識なのです。

 

 

さて。皆さんはここまで見て、どう感じましたか??

 

私は正直、”ここまで必要なのか?”と思えるほどの過度な内装に若干、戸惑いを覚えました。

 

がしかし、これは譲渡率の高さを実現するひとつの戦略。そして、その戦略は確実に功を奏しています。

 

 

実際にここで暮らしているにゃんこたちに目を向けると、隠れ場所も多く、リラックスしている様子が伺えます。(もちろん、全員ではないけれど。)

 

見た目は奇抜ですが、猫にとっても悪い環境ではないことは事実。(訪問者にジロジロ見られるのは、どうしても付きまといますが・・・)

 

次回は、犬舎の様子などについて。

 


 

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3 thoughts on “【アメリカの動物保護施設】サンフランシスコのSPCAを見学。猫編。”

  1. 初めまして。動物愛護団体が行う安楽死について考える機会があり、ノーキルなどのキーワードからこちらのブログに辿りつきました。いつか機会があれば海外のシェルターのお話をお伺いしたいと思っています。
    ・先生はシェルター内での安楽死(殺処分)をどのように考えられますか。
    ・また海外では預かりボラという形はあまりポピュラーではないのでしょうか。

    これまでに、最初の愛犬(小梅♀)を26歳でなくし、その後ある団体の預かりボランティアを引き受けて、トータル2年半ほどの間に2頭の保護犬たち(ともに13歳で他界)と暮らしました。1週間程前に里親が決まったとの説明を受け、7ヶ月共に暮らした(Mダックスの)二頭目の預かり犬と元気な姿でお別れしたのも束の間、原因不明の状態(心臓にも体にも異常ない為おそらく脳の疾患との説明)で急逝したと訃報を伝えられ、まだ現実感がない程ショックを受けている状態です。病気でなくとも譲渡確率の低い老犬(13歳以上)は、これまで積極的に安楽死させてきた団体であることを今になって知り、自分の選択次第では違う「今」があったのではないかと感じられて仕方ありません。さまざまな想いが日々頭の中を駆け巡っています。いつか詳しくお話お伺いできたらと思います。突然のコメント失礼致しました。蔭ながらご活躍を祈念しております。

  2. >こばやしゆうこさん

    初めまして。
    コメントありがとうございます。

    色々とバタバタしておりお返事が遅くなってしまいました。
    申し訳ありません。

    私の個人的な話でよければいくらでもお伝えできます。

    animaltraveler.japan@gmail.com

    がコンタクト用アドレスとなっておりますので、こちらに質問等々、気軽にご連絡ください。

    また、現在世界一周動物写真展ということで日本各地をまわっており、来月は仙台、再来月は鹿児島を予定しています。

    (現在は福岡に住んでいます。)

    もし、こばやしさまのお住まい近くに行くことがあれば直接お話させていただくことも可能ですが・・・

    ご連絡お待ちしております。

  3. すみません、初めて読ませて頂きました。
    私、今ある企業の力を使って、子猫レスキューの支援をしたいと考えています。
    また、そのこはそこで里親さんを見つけるまで育てる。見つからない子は終生、そこで生活できる、そんな施設を作りたいと思っています。
    ノーキルのアメリカやヨーロッパのシェルターを見本に、出来れば日本で頑張っている個人ボランティアさんも繋げていきたい。
    個人の方は物資や資金、場所に困ってる方が多いので。
    もし、よろしければ、こういった世界のシェルターの事を教えて頂けませんか?調べてはいますが、実際に見た方のお話が聞きたくて。
    ぶしつけなお願いで申し訳ありません。

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