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皆さんこんにちは。旅する獣医師のあにとらです。
*前回のブログのつづき。
アメリカは西海岸サンフランシスコにある“NO KILL”(殺処分ゼロ)を掲げた動物保護施設、サンフランシスコSPCA(以下、SF SPCA)を見学させてもらったときの様子について。今日は犬舎を中心に紹介して行きたいと思います。
目次
1.SPCAとは
2.サンフランシスコSPCAについて
3.実際に行ってみた(猫編)
4.実際に行ってみた(犬編)
5.現実と所感
6.どうやってこの施設を知ったのか
※1〜3は前回の記事へ。
※写真は許可を得て撮影・掲載しています。写真の転載はご遠慮ください。(当サイト自体のリンクの転載は歓迎致します!)
さて。前回に引き続き、SF SPCAの内部の様子です。
こちらのMission Adoption Centerは、Maddieというミニチュア・シュナウザーの飼い主さんの寄付によって建てられたのだそうな。
綺麗で開放的なレセプション。写真の奥は猫舎。
レセプションとこれまた開放的な事務所を挟んで、反対側に犬舎があります。
4.実際に行ってみた。(犬編)
真ん中にはちょっとしたドッグラン。その周りに犬舎が並んでいます。全くにおいを感じなかった猫舎に比べ、少し”犬舎臭い”と感じる程度のにおいがあります。
猫舎と同じくタッチパネルで、ワンコの名前や誕生日、性格などを知る事ができます。
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掃除係の人は使い捨てのエプロンに手袋。伝染病対策もしっかり意識しているようです。(ちなみに、掃除のタイミングもあると思いますが、2割くらいの犬舎でう○ち&お○っこが残っていました。)
臆病なわんこの部屋には、中型犬さんの目の高さくらいまでのスリガラス。
部屋の中はけっこう広いです。
好奇心たっぷりな目線。こんな目を見ると、是非とも一緒に遊んでもらいたくなっちゃいます。
わりとフレンドリーなワンコが多い印象。
こちらのワンコは最初からフレンドリーというわけでは無さそう。私が近づくと、ガラス越しに吠え始めました。
”そんなワンコにも、こんな一面があるんですよ。”という感じで、遊んでいる時のおちゃめな動画をタッチパネルで見る事もできます。
また、それぞれの部屋には穴があって訪問者の手のにおいを嗅いだり、ドッグフードを入れたりして、安全にコミュニケーションを取る事ができるようになっています。
私が訪れた時は中型、小型犬さんが半々くらい。大型犬はいませんでした。
にゃんこに比べると若干殺風景な部屋。誤嚥防止という意図もあるのかもしれません。トランポリンのようなベッドはそういった意味でもいいですね。
また、タッチパネルの紹介文がわりかしテンプレで、同じ文章を良く見かけました。
更に気になったことがあります。
5才なのに歩き方に違和感があるわんこがいて、確実に足に異常がある様子。それに関して紹介文で特記が無く、近くのボランティアさんに聞いても把握していないようでした。
入れ替わりが激しくて間に合っていないだけなのかもしれませんが・・・(ボランティアさんは頻度や担当などのこともあるので、たまたま知らないからといって、特別問題なわけではないのですが・・・)
このワンコは不妊手術後なのでしょうか、やわらかいエリザベスカラーを着けています。
*エリザベスカラー:術部を舐めないよう、エリマキトカゲのようなカバーを首に巻く。
ボランティアさんが入って来ると大喜び!!散歩に行くようです。術後も元気に振る舞えるところ、わんにゃんは強いなあ、といつも感じます。
たまらない表情・・・!!
おやつをもらえるのを、もんのすごく期待しているようです。
一部屋に1〜3頭ずつのワンコが生活しています。
入居日のデータを見ると、来たばかりで同じ部屋に入っている事も。もちろん、相性を見つつなのでしょうが、わんこの順応能力の高さにも脱帽です。
ひとつひとつの部屋をゆっくり見ていると、初老の女性ボランティアさんが声をかけてくれました。
里親希望ではなく、単にこの施設に興味があって日本から来た旨を伝え、いくつか質問をさせてもらいました。
入居日などを見ると、にゃんこほど入れ替わりが激しいわけではないようですが、それでも譲渡率は高く、お話によると、ボランティアが全てのわんこを把握するのは困難な様子。
聞き辛いけれど、ここがどうしても聞きたかった!
というところも質問させてもらいました。
それは”本当にNO KILLなのか?”というところ。
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長年ボランティアをされているというその方によると、基本的にはNO KILLを目指しているが、重病などの事情での安楽死はあり得るとの事。
「でも、他の施設では”保護するスペースがなく、場所にあぶれたら殺処分”することが多いのよ。その点、うちのシェルターはNO KILLを目標としているし、譲渡率で好成績を残せているわ。」
と説明してくれました。
少しお話を聞かせてもらって、そのボランティアさんは作業に戻って行きました。
ちょっと悶々とするような、「やっぱりそうか」と変に納得したような、私の複雑な気持ちをよそに、仔犬さんはハイテンションで走り回っていました。
く〜〜〜!!かんわいいなあああ(^^)
↓↓SF SPCAの様子は公式HPの360°画像で見る事もできます!
http://sfspca.interactive360.net/flash/interactive360_SF_SPCA_796.html
5.現実と所感
このSF SPCAに来る事は、中学生の頃からの目標でした。それが叶ったという事が本当に嬉しかった。
この施設に来てまず、私が感じたのは喜びです。
でも、私が「こちらの方がいいな」と思う”当たり前に人にも動物にも優しい社会”というのは、こういったキラキラした世界だけに目を向けていても、たどり着けません。
ゆっくりじっくり見学する事で、見習うべき事と現実を、頭の中で整理していきました。
SF SPCAが”NO KILL”を(ほぼ)実現させているのは、”そうできる”ようなシステムができているからです。
前回と今回にわたって紹介したように、このMission Adoption Centerに入居している犬猫の多くは、他の保護団体から引き取っています。その引き取り基準というのは”譲渡に適していること”。
人間に対する態度に大きな問題が無く、扱いやすい性格で、健康体。病気があっても治療可能である。
SF SPCAはそういった条件を満たした犬猫を引き取ってくれるのです。
その基準に当てはまらなかったら・・・?
それは日本と変わらない現実が、犬猫を待っているだけです。
そう、これが現実なのです。
見事なまでの施設。輝かしい譲渡成績。多くのボランティア。イベントも、病院も、教育プログラムも。全てがとことん充実しているSF SPCA。
でも、この施設の中だけでは動物保護全体の話は済みません。
”地域社会”。その全体像はどうなのか。
その中で、SF SPCAはどういった位置づけで、どのくらい効果的に機能しているのか。それを知りたかったのです。
そのために、私はもうひとつの施設を訪れました。そこには”現実”がありました。
その話はまた次回。
6.どうやってこの施設を知ったのか。
少し自分の話をさせてください。私がなぜ動物福祉について考えるようになったのか、どうやって動物シェルターについて知ったのかについての話です。
中学生に上がると同時に、”犬を飼いたい”という私の希望で、両親と一緒に地元の保健所が主催していた犬猫譲渡会に行きました。
*保健所または動物管理センターだったのですが、子供の頃だったのでどちらか定かではないです。ここでは保健所としておきます。
なぜ、ペットショップではなく保健所だったのか。
両親の意向か私の意向かハッキリとは記憶していませんが、家族の中で当たり前の流れで決まったように覚えています。”命をお金で買う”ということに、我が家では抵抗があったのかもしれません。
その譲渡会で、真っ白の毛にクリクリの目をした元気な仔犬に出逢いました。
そのワンコを引き取れることが決まり、家に連れて帰る道中。用意していた毛布入りの箱に入れても、そのワンコはすぐに出てこようとします。入れても、入れても出てこようとします。
仕方ないので抱き上げるとそのワンコはすぐに、私の両手の上で仰向けになりスヤスヤと寝始めました。
私は帰宅するまでそのかわいい仔犬を手のひらの上に乗せたままでした。
それがジュピです。
私は当然ながら、あっという間にジュピに夢中になりました。
私がこのSPCAという施設の存在を知ったのは、中学1年生の夏。夏休みの読書感想文を書くための本を、街の本屋さんで探していた時でした。
獣医師になりたいのは幼い頃からの夢でもあったので、「せっかくだから動物のことを書こう。」と本棚を見ていたら、ジュピにそっくりなワンコと目が合いました。
それがこの本。渡辺眞子さんの”捨て犬を救う街”。
私の人生において”ここが重要だった”とマイルストーンを置くなら、ジュピに出逢った瞬間と、ジュピに導かれるように選んだ、この本を読んだ時です。
まさに、SF SPCAについて書かれた本でした。
この本には、当時の全国における犬猫殺処分の頭数が、県別に事細かに記されていました。そこで初めて知った自分の地元で殺されている犬猫の多さに愕然とし、ジュピを引き取った保健所の、その扉の向こうで何が起きているかを知りました。
ジュピに似ている!と思った表紙のワンコは、きっと狭いガス室の中で死んだんだろう・・・。そう思うと、やりきれなくなりました。
と同時に、そういった現状を打破するために活動している団体があり、海の向こうではそれが成功している。
日本はなんて遅れているんだ!!
どうにかしないと!!!
中学1年生の私は、単純にそう思ったのです。
それが”獣医になってから何をするか”が決まった瞬間。
全てはジュピに出逢ってから。
そして、その最愛のジュピを失った2017年。この1年も私にとって、とても重要な年になりました。
ジュピがずっと示してくれていた指針を再認識し、ジュピが亡くなって約半年後にたどり着いたサンフランシスコ。
憧れるだけではダメ。
現実的に考えてどこが活かせるのか。
どういった形が日本に合うのか。
アメリカの長所は?短所は?
日本の長所は?短所は?
日本で起きている問題は?
どうやったらより良い方向に進める?
世界から得られるものは何か?
日本だからこそできることは何か?
そういったことを考えながら旅を続け、必ずこの経験を活かす。
この本はお守りのように世界一周の旅に持ってきています。
ジュピのことを思い出してしまうので、なかなか読めずにいましたが、サンフランシスコに着いて海を見ながら一部を読み返しました。
やっぱり、ジュピは出逢った時から、そして亡くなってからも、私の指針であり続けてくれています。
私は特別優しい人間でもなく、性格が良いわけでもありません。頑固で、ピーターパンで、どストレートに物事を捉えてオブラートに包まずそのまま発言してしまうような、”人がいい”とは絶対に言えない人間だと思います。
そんな人間が死ぬまでにどこまでできるかは分かりませんが、今までの旅で、この世界一周で、このサンフランシスコで、得た経験と知識は”宝箱に入れない宝物”として惜しみなく、活かしきろうと思っています。
次回は”これが現実”。
キラキラな世界のすぐ近くにあるもうひとつの施設を訪れた時の話。
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