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ペット社会でもある日本での獣医師の需要は昨今高まる一方です。また獣医師は「犬猫のお医者さん」だけではなく、牛や豚、鶏といった産業動物たちを治療する大動物医や、食品衛生などの公務員としての仕事や企業での医薬品の研究、大学での教育・研究など、活躍の場が幅広い職業です。
そんな社会的に需要の高い獣医師になる方法や獣医学生の生活についてですが、以前はなかなか情報が得られませんでした。高校の進路相談の時も獣医学科を目指す人はほとんどおらず、先生も情報が足りなくて「とりあえず獣医学科かな?」くらいしか考えることができませんでした。
具体的にどんなルートを辿れば獣医師になれるのか、どういったハードルがあるのか、どんな学生生活なのか、全く知るすべがなかったのです。
そんな悩める獣医志望生や親御さん、進路相談の先生方のために、獣医師になる方法と獣医学生の生活について、獣医師である私が解説していきます!
自己紹介”旅する獣医師あにとら” 山口大学農学部獣医学科卒。 獣医師資格取得後、東北にて東日本大震災被災動物シェルターを併設する一般動物病院にて勤務。 一般外来診療とシェルター診療を兼任。 シェルター閉鎖後はバックパッカーとして世界一周ひとり旅とヒッチハイクでの日本縦断を経験。 帰国後は九州最大の夜間救急動物病院にて勤務。 同時期に、仕事と並行して世界の人と動物との共生の様子を伝えるため、全国5都市での世界一周動物写真展を開催。 現在も、執筆活動などを通して動物福祉の向上を目的とした活動を行なっています。
目次 1.獣医師とは 2.獣医師の仕事 3.獣医師不足の問題とは? 4.獣医師になるには 5.獣医師になれる大学一覧 6.獣医師国家試験 7.獣医師の就活 8.まとめ
1.獣医師とは
獣医師とは、”ヒト以外の動物の医師”を指す名称のこと。
牛、馬、豚、羊、山羊、犬、猫、鶏、うずらなどの動物は獣医師以外の者が診療業務を行なってはならないとされています。
獣医師は”動物の保健衛生、畜産業の発展、公衆衛生の向上”の3点を使命としています。
2.獣医師の仕事
「獣医師」と聞いて一般的にすぐイメージが湧くのは”動物病院のお医者さん”ではないでしょうか?となると、ペットを飼っている人以外は関係がないように思われるかもしれませんが、そんなことはありません!
日本に住む全ての人の日常生活に関わるお仕事もあって、獣医師の仕事は本当に幅広いのです!
獣医師が活躍できる職種 ・小動物臨床 犬猫、うさぎや鳥、爬虫類などのペットを治療する一般的な動物病院の獣医師 ・大動物臨床 牛や豚や鶏などの産業動物を対象とした獣医師(農協に所属するなど) 競馬関連などの馬を診る獣医師 動物園や水族館の獣医師 ・公務員 国家公務員(空港や港の検疫所で輸入食品の検疫などを行うなど) 地方公務員(保健所、食肉衛生検査所、動物愛護管理センター、畜産・林業・水産試験場など) ・大学 教員職と研究職の兼任など ・一般企業 人間&動物向けの製薬会社 食品に関する会社 ペット関連会社(ペット保険、フード、グッズ等)
上記に挙げた以外にも獣医師が活躍する職場はたくさんありますが、まずは主な例としていくつか挙げてみました。
色々と書いているのでわかりづらいかもしれませんが、特に公務員や農協、製薬会社などの一般企業で働いている獣医師の仕事には、普段みなさんが食べている”食べ物”や”医薬品”の、研究や生産から手元に届くまでの安全と安定を守るための仕事が非常に多いのです。
一般的に獣医師は”ペットのお医者さん”というイメージが強いと思われるので、意外に思われるかもしれません。
獣医師が食べ物の生産と検査の根幹を扱っている以上、日本に住む人全てに関係のある仕事と言えます。
3.獣医師不足の問題とは?
上の項でお話したとように、獣医師は日本社会において非常に重要な仕事を担っています。がしかし、公務員や大動物(牛や豚など)の獣医師不足は大きな問題となっています。
それもそのはず。人間の医者になるための医学部の定員は約1万人ですが、獣医の場合は定員は約千人、10分の1しか学生人口がいないのです。(年度によって変わることがあるため、”約”としておきます。)
そして、この千人が上に書いたような職種にバラけます。
日本国民全員の食を守るための仕事は、量も密度も想像できないくらい重要なものです。加えて、子供よりペットの数が多い日本社会において、もちろんペットの獣医師も必要なわけですから、”獣医師が足りない”のは目に見えていますよね。
ということで、できるだけ多くの獣医師ができてほしいのですが、日本では1年あたり千人ほどしか増えない訳です。
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もちろん、定年などの理由でお仕事を辞められる方がいるので減る人数分もありますし、国家試験に受からず免許が取れない場合もあるので、純粋に千人増える訳ではありません。
4.獣医師になるには
みなさんの周りには獣医師の知り合いはいますか?
ペットを飼っている方は動物病院で会うことになると思いますが、そうでなければなんだかんだでマイナーな職種だろうと思います。
私は獣医師としてはイレギュラーな生き方をしているので、動物関係者以外と関わることが多いですが、よく「獣医師って初めて会った!」と言われます。実際、世界中&日本中を旅していて偶然獣医師と出逢うなんてことは今までで一度もありませんでした。
生活の根幹に関わる仕事で需要が高いわりに、珍しい職種である獣医師。そんな獣医師になるための方法を紹介します。
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獣医師になるための一般的なルート 小中学校卒業 ↓ 高校卒業(進学高であることがほとんど) ↓ 大学の獣医学部(または他の学部の獣医学科など、獣医師になれるコース)入学 ↓ 6年間の勉強と実習(進学テストがあることも) 卒業研究と卒業論文の制作 ↓ 大学6年目に獣医師国家資格受験 ↓ 合格 ↓ 就職(就活はおおよそ3〜6年生の間に行う)
私の体験談からお話すると、獣医師になるためのルートの中で大きなハードルは大学入試と国家試験です。
大学入試は1浪、2浪(浪人する年数)は当たり前でしたし、長い人では9浪という人もいました。
国家試験は卒業研究や卒論と並行しながら、6年次に受験します。合格率は大学入試よりは高いですが、一度落ちると、その次の年からは一気に合格率が落ちる(予備校などがないので、独学しないといけない)ので、全てをかなぐり捨てて勉強してどうにかして受かる!という感じでした。
5.獣医師になれる大学一覧
需要の高い獣医師ですが、獣医師になれる大学はあまり多くありません。以下に日本国内で獣医師になれる学校を列挙していきます。
ー国公立大学ー 北海道大学、帯広畜産大学、岩手大学、岐阜大学、東京大学、東京農工大学、鳥取大学、山口大学、宮崎大学、鹿児島大学、大阪府立大学 ー私立大学ー 酪農学園大学、日本大学、北里大学、麻布大学、日本獣医生命科学大学、岡山理科大学
現時点で日本国内で獣医師になることができるコースがある大学は、国公立が11大学、私立が6大学の全17校です。(岡山理科大学は近年開設したので、私が受験した頃は全16校でした。)
学校の偏差値や学費、地元との距離や生活する上でのその地域の物価などを合わせて、家庭のお財布事情なども考えると、選択肢は決して多いとは言えなかったです。
6.獣医師国家試験
6年次に受ける全国同時開催の国家試験です。これに合格して”獣医師免許”を取得しないと、たとえ獣医学科を卒業しても獣医師として働くことはできません。
そう、大学に6年間通って必死に勉強しても、ここで落ちたら獣医師になれないんです!
国家試験は大学入試よりかは合格率は高いと言いましたが、6年次は相当勉強を頑張らないと、よほどの天才でない限り落ちます。(みんな血まなこで勉強します。)
しかも大学在学の後半は卒業研究、6年次は国家試験勉強と並行して卒業論文制作がある(大学によるかもしれないが)ので、それはそれは疲弊します。
獣医学科のある大学が限られているので、大体は親元を離れての生活となりますから、生活のためにバイトを続けないといけない場合も多く、より一層ヘトヘトになります。我ながらよく乗り切ったものだ・・・と思います。
余談ですが、ここまで頑張っても獣医師の年収ってそんなに高くないんですよね。(獣医師の収入についてはネットで調べてみたらすぐ分かります。)
7.獣医師の就活
”4.獣医師になるには”でも少し触れましたが、獣医学科を修了して、国家試験に合格し、獣医師資格を取ったとしても、自動でお仕事が付与されるわけではありません。
獣医師も他の仕事と同じく”就活”をしなければなりません。ただし、合同企業説明会に参加して云々かんぬん・・・という感じの一般的な大学生の就活とは少し様子が違います。(もちろん似たような説明会は開かれることがありますが。)
以下に、獣医の学生が一般的に行う就活の方法を挙げておきます。
獣医学生の就活 ・自分で調べた上で動物病院などに出向き、面接や実習を受ける。 ・合同説明会で企業を探す。(獣医学生向けに大学単位で開かれる場合もある) ・公務員や企業、大学教員などは一般的な採用手順に準ずる。
早い人では1年生の頃から、気になる職種の見学や実習などを行うこともありますが、一般的には3年次くらいから就活を始めているかな、と思います。
私の場合は4年生くらいから動物病院の見学や実習に行ったりして、実際の面接と採用は国家試験合格後でした。(わりとのんびりしていた方だと思います・・・)
8.まとめ
獣医師に限らず、どの仕事も尊敬すべき素晴らしい仕事ばかりです。
私は犬猫を主に扱う動物病院の獣医師しか経験はないですが、私たちの生活の基盤を守ってくれている公務員や大動物獣医師さんへの感謝を忘れずに、自分の職務を全うしていきたいと思っています。
今回は獣医師の仕事内容や獣医師になる方法など、実体験を元にまとめてみました。特に獣医師の職種のバリエーションは驚かれる方が多いので、情報のひとつとしてこの記事が役に立つことができたら幸いです。
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